

【連載】ただの渋谷で飲んでるご機嫌な人かと思いきやなんかめちゃくちゃ面白くて実はすごいんですけど誰ですかあなた?
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山﨑恵
vol.5 村上雅彦さん (Skeleton Crew Studio代表/BitSummit理事/渋谷あそびば制作委員会 代表理事)
取材:山﨑恵
最近、同じ街ばかり歩いてるなー。昔は海外1人旅もしたこともあったっけ。長時間の国際線でさ、着陸数時間前に隣の人と話こんだら、めっちゃ面白かったあの感じ。なつかしい。もしかして普段行かない渋谷に行ってみたら、何かがあるかも?
そんな気分でひょっこり訪れたのは、渋谷サクラステージ4Fにあるクリエイターの遊び場「404 Not Found」。ラテを頼んで席に着くと、横には明らかにかっちょいい空気感の方が。むむ!あのー、機内の限られた時間だけ話すイメージで、話しかけてもいいですか?(い、いつもはしないですよ!汗)
「こんにちは。なるほど。僕はイベントなどを企画して人を集めたりするので、社交的に見られるけど、ふだんはオニ内向的で。でも今日は話すスイッチ入れて行きますよ」
と、無茶ぶりにのってくれたのは、なんとインディーゲームの世界で有名なSkeleton Crew Studio代表の村上雅彦さん。
うわーありがとうございます!私、渋谷ってもともとあまり来なくて…。
「わかります。僕もあまり来なかったですよ。好きな人と会うのは好きで、今はこの場所があるから来ますけど、キラキラしたものが見たいわけでもないし。わりと行動原理が、目的があって動くタイプなんで」
なるほど。人ありきってことですね!それにしても、わくわくするゲーム機がありますね。村上さんも、小さい頃からゲーム好きでした?
「めちゃめちゃやってましたよ。僕は3歳の時にファミコン、5歳の時にスーパーマリオブラザーズが発売したとか、友達の家でゲームしてカセット貸し合ったとか。ゲーム史の進化をユーザーとして肌で感じてるし、すべての思い出がゲームに紐づく可能性もあるなってくらいです。なんで好きかって言ったら、もうなんか、当たり前のものだったんですよね。高校生の頃くらいからバンドやったり、絵を描いている時の方が心地よくなって、ゲームから離れてたんですけど。そう、アメリカでですね」
なんでしょう?聞きたい!
「アメリカ西海岸の絵や音楽、カルチャーが好きで、3ヶ月だけアメリカに行こうと思いたったんです。でも一番最初の機内でアナウンスが全く分からず、そうか。英語というものがあったか、と」
え!!そこで気づいたんですか?(笑)
「そう。でも向こうで、ゲームに救われたんですよね。日本の文化に興味のある人とは会話ができなくてもゲームはプレイできた。子どもの頃遊んでたストリートファイターなんかが過去の遺産で何となく遊べるんですよ。技とか基本一緒だし。そこで、すげえなゲーム!ノンバーバルなコンテンツ、超すごいと思って。久しぶりに感銘を受けましたね。3ヶ月と思っていたアメリカ滞在でしたが、いろんなご縁で大学で本格的に絵を学ぶことになって、ゲームのコンセプトアートの仕事もして。自分で道を選んでいるっていうより、会った人との化学変化みたいな感じで、10年間住むことになったんですよね」
えええ3ヶ月が10年とは!出会いの連続ですね。
「本格的に勉強をすると、絵を描くのがさらに好きになって、どんどん上手くなっていったんですけど、明らかに追い越せない高レベルのクラスメイトたちがいて。彼らは私生活とかは、だらしないんだけど、筆を持たせたらめちゃめちゃ上手い。その時に、自分はその人たちを応援して、何らかの形で助けてあげる方が世界は幸せになるんじゃないか、自分にはそういうのが向いてるかもなって思ったんですよね」
うわぁ。原点を感じますね!
「それから日本に戻って、のちに京都でゲーム会社を設立して、今となっては13年続いている日本で一番大きなインディーゲームのイベント『BitSummit』の立ち上げに関わりました。ちょうどソニーのプレイステーションがオンラインストアを始めたりした時期で、個人でゲームを作りたい人たちがもっと文化に乗っかれるような準備をしておかないとと思いました。最初の一歩は自分達のゲームをもっと知ってもらいたいって感じで、自分ごとから始まったんです。『あいつのゲーム超すげえ。どうやったらできるんだろう?』って、実際に作ったものをシェアする場所ができ、インディーズのゲームカルチャーが生まれたんです」
最初の一歩は自分ごと!しびれます。そして404 Not Foundの立ち上げにも?
「そうですね。ここができる時に、もともとこの施設の食エリアのプロデュースをしていた小川さん(404のフードプロデューサー)から、『カルチャーの中心地として、何か面白いアイディアないですか、例えばゲームとか』って相談を受けたんですよね。その時に、世界のどこを見ても、インディーズのゲームクリエイターを集めようとしている商業施設ってないんじゃないか。うまくいったら世界中からクリエーター達が来てくれる場所になるんじゃない?そういう渋谷は面白いって話をしていて。じゃあやろうって話が進みました」
確かにこういう場所、初めて来ました!あの…実はぐうぜん、うちにプログラミング好きな13歳の息子がいまして。作品、見てもらってもいいですか?(ぎゃっ!いきなり母感)
「もちろん!どうぞどうぞ」
これは10歳の時。ポッキーの日(11月11日)にポッキーのイラストが踊る動画を作ってたんですけど
「めちゃめちゃ面白いじゃないですか。ここ(スクリーン)で流しましょうよ」
え!!本当に?その感じ、作る人はうれしいだろうなぁ。
彼は頭の中が、なーんか忙しそうで楽しそうだなぁ、と。なにかに繋がっていくのかなぁ、と思ってはいるんですけどね。
「いいですね。間違いない。そういう人たちが大好物です。ここはそのための場所ですよ。
ここに来るのには、本当に何の目的もなくていいというか。行ってみたら面白い人がいて、遊びを一緒に考えるとか、喋ってみたらなんか楽しいとか。曖昧な目的地になってほしくて。なんとなく気の合う仲間と会えるような場所を作りたいから、そういう仕掛けをいっぱい考えているんですよ。自由にここで作業していいよって電源いっぱい置いたりとか。ドリンク一杯買ってくれたら、ここあなたの場所として使って、居てもいいよっていう心理的な安心を持ってもらうなど色々考えてて」
しみるー!そういう居心地の良さってありがたいですね。
「404はクリエイターの遊び場とか空き地ってキーワードで作っていて、ここを面白くするという協力関係のもと、当事者としてクリエイターと向き合ってて、それでいて自分とは全員違う特性のあるプロデューサー、遊び場のガキ大将を6人集めたんですよ。いろんな人が関わることで、この世界はもっと広がっていくだろうな、という思いもあって」(ぜひ、連載のご一読を!)
ガキ大将=ジャイアンが頭に浮かんじゃいましたが、協力的なガキ大将って最高ですね!すでに、ここから生まれた出会いってありますか。
「めちゃめちゃありますよ。ここで出会った違うジャンルのクリエイター同士が、一緒に何か作ろうって話になるとか。クランメンバーっていうメンバーシップ制度もあって、そこで出会った心理学専攻の大学生とゲーム専門学校の学生さんが同じゲームで遊んでたりとか。そういうのすげえ接点だな、と。ふだんアクセスしているところが違うけど、404で稀有な出会いをしました、みたいな。カルチャーは自然に発生した方がいいと思う反面、文化の種のような新しい出会いが発生するこの場所がいいなぁーと思います。もしかしたら、ここは日本の未来を救う場所になるかもしれないですよ」
うわぁ!聞けば聞くほど、連れて来たい人の顔がどんどん浮かぶなぁ。
「ぜひ。ここもようやくケモノの匂いがしてきたけど、文化を醸成するって時間がかかることなので。面白い場所があるよって口伝で少しずつ人が集まってくる感じがこの場所に合ってるなと思っているんです」
けものが棲みついてきた感!選りすぐりのインディーゲームをまとめて遊べるゲームセンター404(開催中~)にも、楽しみたい人が集まってきてますね。
「ゲームを作る小さなコミュニティなどに、あなた達の成果物を遊べる場所作りませんか?と声かけて、いくつかの団体と提携してやってます。ドリンク1つ買うとコイン3枚もらえて、好きなゲームに投票して応援してねっていう。これも神戸の大学生が作った作品なんですよ。いいですよね。やっぱり作る人には遊ぶ人が必要で。それは彼らのエネルギー源なので、遊ぶ場に呼んであげないと。
インディークリエイターにとって何が役に立つか、みたいな事をいつも考えているんです。日本はまだギリギリ、コンテンツ大国だけど、ここからはどうなるか分からないので、クリエイターが世界へ行って、そしてまたここに集まる若いクリエイターたちに還元する、みたいな循環ができたらすごい素敵だな、と。そこでバナナのゲームで遊んでる小学生も、それが何かのターニングポイントになるかもしれない」
ドキドキ!こんな風に作るも遊ぶも生み出される場所、いいなぁ。ゲームって面白いなぁ。
私、つい「いつまでゲームやってるの」とか、スマホも使いすぎ問題とか、言っちゃってた人でした…。
「それもめちゃめちゃ大事。社会性があったうえで個性が生きるんで。当然その社会にいたら、そこのルールっていうのを理解していく必要があって。僕からしたらものごと全てがゲーム。制約とルールと1人以上の人がいれば、ゲームになる。また同じ穴で落ちたがな!ってなっても、また挑戦できる。何度も繰り返すと、確実に成長しているはずなんで。教育もゲーム的なマインドがあれば少し楽しいかもしれませんよね」
それは楽になる!村上さん、出会えてよかったです。あぁーもうすぐ目的地に着く時間…。
「機内の雑談ってこういうことですよね。旅が終われば、それぞれの街にわかれていく感じ」
そう、その感じ!最後までありがとうございました。今度息子を連れてきますね!
「ぜひ!運営室からみんなを見てるのが好きなんで、隠れてますけど」
そんなー
「呼び出してください。いつでも出てきますよ!」
ありがとうございますー!
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ライター
山崎恵
日々のできごとに引きこまれ、人と話すことや書くことをしています。UAEやアメリカ在住経験も生かし、全国紙「お母さん業界新聞」で世界の子育て研究プロジェクトにも参加中。
ふらっと誰かに、何かに会いに行くのも好